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パワーエレクトロニクスの始まりはアポロ計画だった?!

月面に人が降り立ったことで有名な「アポロ計画」ですが、アポロ計画のあった1970年代からパワーエレクトロニクスの分野が発展したと言われています。「月に人を送り込む」3人の宇宙飛行士の命がかかっているため失敗が許されない計画で、機器を動かすための電力供給を効率よく行ったのが現在のパワーエレクトロニクス技術に繋がっています。

アポロ計画の全容

1段目と2段目の燃料を使って地球の引力圏を抜けて衛星軌道に入り、タイミングを図って少量のジェット噴射で軌道を変え、月へ向かい月の衛星軌道に入り、着陸して再び月の引力圏を離れ、地球に戻ってきました。月の引力圏は地球の引力の1/6なので、少しのジェット噴射で十分でした。ロケットには軌道を感知するセンサーや地球と交信するアンテナなど積むべき機器が多く小型が望まれます。さらに地球の引力圏を抜けるために大量の燃料を燃やさなくてはならず、人が乗れるスペースはただでさえ限られているそうです。また、危機を動かす電力を供給するために燃料電池やソーラーパネルを搭載していますが、これらが供給する直流電圧は安定せず、生命に影響を与えかねません。

高品質な直流を得る方法

バイポーラジャンクショントランジスタ(以下、BJT)は、電子や電子の抜けた穴(正孔)の移動をコントロールする半導体デバイスで、電力を増幅させることができます。しかしBJTに含まれる電子や正孔の数に限りがあるため、飽和して増幅できなくなります。この飽和している状態はBJTにかかる電圧は一定なので、これを利用して、一定電圧の高品質な直流を得ることができます。

しかしこの方法だと熱が発生してしまいます。地球上なら空気を介して冷却できますが、宇宙空間では熱を冷却する物質がありません。そこで考えられたのが「熱をなるべく出さずに電力を変換する」方法で、これが後に電気自動車やスマートフォンなどに使われるようになりました。

ロスの出ない電力変換技術

熱が発生するのは「抵抗」と呼ばれる電気を通す物質から発生し、BJTも半導体という物質なので熱を発生します。しかし銅線を円状に巻いたコイルや電荷を蓄えるコンデンサでは熱は発生せず、さらにスイッチではほぼ熱は発生しません。そこでコイルやコンデンサ、スイッチを用いて電力変換を行おうとするのが、「パワーエレクトロニクス」で世の中にあふれる電気製品のほとんどで使われています。ただスイッチといっても、手動で行うわけではなく、BJTなどのトランジスタやサイリスタなどの半導体デバイスを賢く使えば、高速でスイッチングさせることができるようになっています。